学校林には、この日のために新たにステージがつくられ、いくつかのパフォーマンスが行われました。木々に囲まれて時おり木漏れ日が注ぐ空間がなんとも似合っていた「信州大学ケルト音楽研究会 S-Celts」による演奏会で幕開け。続いてさっきまで似顔絵ブースで描いていた絵本作家きたじまごうきさんが、絵本の読み聞かせに登場します。ミュージカル・ウォッシュボードを演奏しながら子どもたちを巻き込んだり、ステージや客席を走り回ってアクティブな読み聞かせパフォーマンスを披露。そして驚いたのは中学生シンガーのSuiさんとギタリストのJunさんのユニット「suijun」。今年3月に茅野市民館で行われた「変身市場でよみフェスやろうよ!」で結成されたばかりだそうですが、Suiさんの澄んだ歌声と、それを支えるJunさんのトークとギターがなんとも心地よいのです。絵本「ぼくを探しに」をSuiさんの朗読と歌で読み進めていくパフォーマンスはとてもクオリティの高いものでした。
木で作られた楽器やおもちゃを並べたMOCさん、一杯一杯を丁寧に淹れてくれたこはるCOFFEEさん、キューブのあんぱんが可愛らしいパン屋のコフレさん、アンサンブル伊那さんはクッキーやマフィンのほかに地元の果物を並べていました。実行委員長の小池さんのお家で採れたブロッコリーを使ったケークサレなどを販売していたのはクラベさん。そんなお店、お客さんの合間を飛ぶように舞っていたダンサーの木元梨枝さんはさながら学校林の妖精のようでした。お客さんに白い衣装へ思い思いにペイントしてもらい、楽しく交流していました。
事前のワークショップで作った、繭小屋やダンボールハウスも秋の森を彩っていました。元気な声を上げながら走り回る子供たちの楽しそうな笑顔が印象的でした。
『月夜のファウスト』の開演は14時。でも13時には、お客さんが並び始めました。このツアーで初めての昼公演。会場には暗幕がなく、大きな窓を遮光していたのは緑のカーテン。スタッフが頑張っても外の日差しがほんのり感じる空間での上演でした。それでも約75名のお客様はしっかり集中して、舞台に見入ってくださいました。
終演後はアフタートークがありました。トランクシアター・プロジェクトについて串田監督は「立派な劇場もいいんですけど、小さな空間でやるのも大事だなと思い始めていたところで県からお話しをもらいました。今年で2年目です。1年目は皆さんこんなところでできるの?という戸惑いがありましたが、2年目になって、だんだん取り組みを知ってもらえるようになって口コミで広がっていきましたね。今回も実行委員会の方が動き回ってくださって、評判も上がって、幕を開けてからどんどんチケットが売れたんです。東京だと公演の1カ月前にチケットがなくて、作品もできていないのに評判が上がるのはおかしいなあと思うこともあるんです。始まってから皆さんが反応してくれるのはとてもうれしいし、理想的な形だなって思いました。実行委員会の皆さんの苦労もあるんだけど、その先にいるお客さんともつながって、次はどうなるの?という関係ができる。一緒にやるというのはそういうことで、僕が求めていたのはこれだったのかなって思いました」と語りました。
会場の皆さんからも、感想から始まり、作品の作り方、串田作品で楽器を演奏することなどなどに質問が飛び出しました。時に役者さんもタジタジするなど、笑いの絶えないひと時になり、串田監督が「一つの場所で2公演できれば宿泊もするから、みなさんといろいろしゃべったり交流できるんですけどねえ」と語ると拍手が起きるなど、終始温かい雰囲気に包まれていました。