【音楽】君塚仁子&綱川泰典が出前事業にやってきた!〜長野養護学校すざか分教室

「コバケンとその仲間たちオーケストラ」のコンサートの一環で、アウトリーチコンサートが7月4日(木)に須坂市の「長野養護学校すざか分教室」で行われました。同校は知的障がいを持つ生徒さんを対象に、社会人としての長い人生を豊かに生きる力、社会生活や職業生活を営むための基礎なる力、地域社会で主体的に生きる力を育むことを目標に掲げています。

今回の出前授業には、フルート&オカリナ奏者の君塚仁子(のりこ)さん、フルートの綱川泰典さんがやってきました。プログラムは「コンドルは飛んでいく」「椰子の実」「ホールニューワールド」「アメリカン・パトロール」「アメイジング・グレイス」という耳なじみのある曲が並びました。

君塚さんはオーケストラではフルートを担当していますが、一方でオカリナ奏者としても活動しているので、この日はオカリナとフルートというユニークな顔合わせになりました。
「二人で演奏するのは昨夏の飯山に続いて2回目。フルートとオカリナという組み合わせは珍しいんですよ。それぞれでアレンジして演奏しているんですけど、どうせだったらオカリナの魅力が伝わるように、いろいろな楽器を使い分けて演奏してみます」(綱川)
君塚さんは顔ぐらいある大きなものから手のひらに隠れてしまうような小さなものまで、さまざまなオカリナを持参されていました。大きなものは低い音、小さいものは高い音が出ます。普段オーケストラでは高音を担当するフルートも、この日はほとんどオカリナよりも低音のパートを奏でていました。それもまた珍しいことのようです。

フルートの綱川さんは全盲の奏者です。
「実は僕は楽譜を持ってきてないんです。僕の場合は覚えるのが基本。じゃあどうやって覚えるのかと言えば、楽譜を点字に直して、手でそれを読んで。でも手で点字を読んでしまうと楽器が弾けないでしょ? だから覚えるんです。オーケストラで演奏するときは、仲間の奏者さんがかすかに息を吸う音や服が擦れる音でタイミングを測るんです。それでもわかりにくいときは周りの奏者の方に一緒に息を取ってもらっています。そういう工夫と集中力でなんとか頑張っています」(綱川)
「コバケンとその仲間たちオーケストラには障がいのある方もいて、自然と周りのメンバーとコミュニケーションの密度が濃い関係性になっているんです。お互いに自分たちでできることを一つずつ合わせていく。ほかのオーケストラ以上に心を合わせていくという試みをしているんです」(君塚)
「最終的にはコンサートに着てくださった方たちとも心を一つにして、良い演奏を届けるのが目標ですよね。そして、みなさんにも、また会いたいねと思っていただければうれしい」(綱川)

二人の話は弾み、最後の曲にたどり着く前に、授業終了のチャイムがなりましたが、先生たちが許してくださったおかげで、出前授業は続行!
生徒さんたちに「何か聞いてみたいことはあるかな」と問いかけると、なんと楽器の金額についての質問が。思わず苦笑いしてしまうお二人です。ちょっと生々しいので、ここでは金額を控えましょう!

最後の曲「上を向いて歩こう」をみんなで歌ったり手拍子したりしながら演奏が終わると、今日のお礼として生徒さんたちが日ごろ製造販売しているクッキーがプレゼントされました。
授業は一旦、ここで終了。けれども君塚さんと綱川さんが楽器を触ったり、吹いたり、交流する時間を作ってくれたおかげで、演奏は静かに聞いていた生徒さんたちでしたが、二重、三重にお二人を囲んでいろいろ質問している様子が印象的でした。