【演劇】飯綱「Autumn演劇Festivalでファウストが二倍美味しい」

 飯綱町に下見にうかがったときは、まだ春先の雪が残るころでした。むれ温泉天狗の館にある、今は使われていないレストランで公演を企画していただいたトランクシアター・プロジェクト2018『或いは、テネシー・ワルツ』に続き、2019年の今年は会場をいいづなアップルミュージアムに移して『月夜のファウスト』を実施してくださいました。
題して「Autumn演劇Festival in Iizuna Apple Museum」。

『月夜のファウスト』の始まる前、17時30分からはマリオネット・オペラ『知ったかぶりファウスト』が上演されました。
中心となったのは、レストラン「アリコ・ルージュ」を営む徳武安紀子さん。徳武さんは、知り合いのオペラ歌手や歌が好きな仲間と、オペラの物語をマリオネットで演じるマリオネット・オペラをやってきた方。これまで『ペール・ギュント』『椿姫』『夏の夜の夢』なんかを上演しきました。実は徳武さんは劇団青俳養成所をへて、劇団民衆舞台に参加、木下順二脚本、山本安英主演の伝説の名作『夕鶴』の全国公演に同行されていた経験もある方なのです。

「去年まで7年間、2時間くらいでの演し物をやっていたんです。とにかく楽しんでいただくことをモットーに。でも、お客様に一回お休みをいただくとお伝えしていたんですよ。そしたらトランクシアター・プロジェクトのお話が耳に入ってきて。『ファウスト』だったらグノーのオペラもあるなあって。『ファウスト』って奥が深くて、どんどん面白くなっていきました」
そしてでき上がったのが『知ったかぶりファウスト』。老学者ファウストが、学問など無駄だったと嘆き、毒を飲もうとしているところに悪魔メフィストフェレスが現れる。「欲しいのは金か名誉か」。ファウストは青春の快楽を望むと、メフィストフェレスは死後の魂をわたすことを条件に了解する。そしてファウストは美しい娘マルグリートに愛を告白する……。
『月夜のファウスト』が串田芸術監督らが語るファウストだとしたら、これは飯綱で語られたファウストの恋愛話。面白キャラクターの悪魔メフィストフェレスを目を大きく見開いて演じる党主税さんが、お客さんを物語に引き込みます。ファウストとマルグリートは人形が演じていましたが、マルグリート役のソプラノ歌手・花岡佑美さんが時おり等身大のマルグリートとして愛らしい姿を見せます。そしてピアノを瀧澤典江、サックスを七澤秀星さんが生演奏するぜいたく。徳武さんも妖精としてストーリーを解説してくれました。実行委員の古木惣一郎さん、遠藤美代子さんもコスプレで参加していました。
お客様が爆笑するシーンもありつつ、終始楽しそうに見入っていました。無責任には言えませんが、またマリオネット・オペラが復活してくれるといいですね。

オペラの後は会場まで、地元産のワインやシードル、ジュースなどでお楽しみのバータイム。あちこちで和やかに会話する様子が。『月夜のファウスト』ツアーのスタッフもちょっと羨ましそう?

そして『月夜のファウスト』が、コスプレをしたままの古木さんの挨拶から始まります。小さなお子さんや、おしゃれな若者たちが前の方に座ってくれました。約80名のお客様は、とってもノリよく舞台を楽しいでいらっしゃいました。
会場のいいづなアップルミュージアムは、飯綱町の小高い丘の上に立っています。市街地からは少し離れた場所でしたが、森の中のポッと温かいあかりが灯るようでした。