ワークショップは、午前は子供の部、午後は大人の部と2回に分けて開催いたしました。自己紹介から始まり、歩きながらアイコンタクトしたり、徐々にお互いの距離を縮めるようなワークをいろいろやります。ただ、子どもは元気がいいぶん、走り回る時間もたくさんありました。そして、メインイベントは、2人ひと組になって、1人が「自分が大事にしているもの」「もう長く使っていないから捨ててしまおうかなと思っているもの」を一方が告白し、もう1人が「もの」になって持ち主の告白を聞くというワークでした。子どもの部も大人の部も大まかな流れは一緒です。
まずは子供が対象の午前の部。「演劇ってつまらないものとだと思い込んでいるかもしれないけれど、意外と面白いんだよ」ということを裏テーマとしてスタート。けれどそもそも演劇体験がない子も多く、演じるということよりも、体を動かすことで、初めて会った子同士の壁がスルスルと溶けていくようでした。ワークショップには大人も混じっていました。知らない大人と一緒にペアを組んで照れ臭そうにしている子もいましたが、ワークショップの最後に実施した自分の「大事なもの」とお話してみる、誰かの「大事なもの」になってみるというワークは、お父さんお母さん、あるいは先生とは違う日常にはない関係性だったからこそ、「本当の気持ち」が見えてくるような瞬間がありました。
午後の大人の部は、定員以上に多くの方々に集まっていただきました。こちらもやはり演劇体験がほぼない方ばかり。「演技をするというと、なんだかすごい遠いことのような気がするでしょ?でもここにいる僕と、アルバイトでお店に立つ僕とでは同じ僕でも、やはり少しずつ違うんですよね。皆さんも日常のシチュエーションで言葉やキャラクターを使い分けていますよね」という武居さんの言葉に、演じることへの緊張がほぐれていくようでした。体を作った動きのワークでは、参加者それぞれの年齢や身体に合わせて無理をしない範囲で動いてましたが、でもどんどん空気がリラックスしていくのが感じとれました。
逆にそうなると面白いのは、やはり最後の「大事なもの」のワーク。子どもの場合は「本当の気持ち」が出てきているように見えたのに対し、大人はウソを楽しんでいるように見えてきます。まあ、日常で堂々とウソをつけるシチュエーションはありませんものね。きっかけは本当のことだったりするのですが、話しているうちに背景となる要素が少しずつ盛られていきます。そうなるといつの間にか新たな物語までできてしまったりして。最後は皆さんの前で発表するわけですが、それはもう立派な役者体験です。
子どもの大人もほんの2時間という短いワークショップでしたが、日常と似ているけれど、日常とは違った体験をしていただけたのではないでしょうか?
(写真:田中慶)